● たび石 前のページへ戻る   HOMEへ戻る   東三河の伝説・昔話へ 

 拾石の素戔鳴神社の急な坂を登ると、本殿があり、シンとした境内に入っていく。鳥居の右のはしっこでさっきからそわそわしているものがいる。
それは…足袋だ! いや、キングコングが履いているみたいなでっかい足袋の形をした石だ。
「おいすずめどん、松平の家忠様は今どのへんじゃ?」とその石が聞いた。
「ちゅんちゅん、松平の殿さんは深溝城を出たとこさ」
ソワソワソワ
「おいすずめどん、松平の家忠様は今どのへんじゃ?」
「ちゅんちゅん、松平の殿さんは幸田と竹谷と拾石の分かれ道にさしかかったとこさ」
ソワソワソワ
「おいずすめどん、松平の家忠様は今どのへんじゃ?」
「ちゅんちゅん、松平の殿さんは拾石のメインロードを下りてきて、右に曲がってー左に曲がってー右に曲がってー拾石川に来たとこさ」
ソワソワソワ
「おいすずめどん、あ、足音だ」
大勢の家臣を従えて松平家忠は本殿を参拝した。 それからクルッと向きを変え端っこで草に埋もれているたび石の前にやってきてひざまづいた。
「たび石、わしらはこれから浜松城の家康様にお目にかかりに行く。 いつものように皆無事に行ってこられるようにどうぞお護りくだされ。パン、パン」
そして家忠はゆっくりたび石をさすると、すっくと立ち上がり、
「皆の者、出立じゃ!」
家忠は海際の道を通り、地蔵が崎から犬飼湊に行き、船で浜松へ向かって行った。
「ちゅんちゅん、また頼まれちゃったね。たび石」
「うん、旅の安全はおいらにまかしょー」
「ちゅん、たび石の足袋と旅ってかぁ〜、たび石ってオヤジ〜」
「………(苦笑)」
江戸幕府ができる約20年ほど前のことだった。この事があってから人々は家忠にあやかり、たび石に無事を祈願して旅に出たそうだ。
 広報がまごおり(平成26年3月号) より引用 


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