七たいら淵 前のページへ戻る   HOMEへ戻る

 昔、高野に大変美しい娘さんがあった。この美しい娘さんのところへ、またずいぶん立派な美青年が、どこからともなくやってくるようになった。2人はだんだん仲がよくなり、毎夜毎夜睦まじく時を過ごすようになった。これを見ていた母親は心配になり、娘に向かって「毎夜お前のところへ遊びに来る青年は、どこの村のだれだね。」と尋ねた。娘は「それが、どこの村の何という青年なのか、私にも分らないのです。いくら聞いてもただにこっと笑うだけで教えてくれないのです。」と答えた。
 母親は娘の話を聞いて「それは変なことだね。どこのだれだか分っておれば、あんな立派な青年だからお前のおむこさんにしてもいいのだがね。」と心配そうに言った。娘は
「お母さん、まだ不思議なことがあるのです。私はいつも雨戸をきちんと締めておくのですが、あの人はいつの間にか私の郊屋へ入ってくるのです。」と言うのであった。
 いよいよおかしいと思った母親は、その青年が今度遊びに来たら、糸をつけた針をはかまの裾に刺しておくように娘に言った。
 その夜も、青年はいつものように締めてある雨戸の細い隙間から入ってきた。そこで娘は母に言われた通りに、はかまに針をつけておき、夜明けごろ送り出した。母親は娘からの知らせで、大急ぎでその糸をたよりに青年の後をつけて行ってみた。するとその糸は六地蔵まで続き、黄柳川のいの淵の中へ入っていった。
 娘の母親は不審に思いながら、淵のそばに立って水の中をじっと見つめていた。するとそのうちに淵の底から話し声が聞こえてきた。よく聞くと大蛇の親子が話しあっているのだった。「お前はとうとう人間に見破られたから、もう二度と娘の所へ行ってはだめだよ。」と母大蛇が言うと、「でもいいよ、もう子どもができているからね。」と子大蛇が答えた。母大蛇は「でも人簡はりこうだから、しようぷをせんじて飲ませるだろう。」と言った。
 娘の母親はびっくりして急いで帰り、このことを娘に話すと共に、母大蛇が話していたように、しようぶをせんじて娘に飲ませた。するとその娘は、急に産気づいてお産をした。ところがなんと、生まれたのはたらいに七杯もの蛇の子であった。娘は大変嘆き悲しみ、そのたらい七杯の蛇の子を高野の下の淵へ捨ててもらった。それからこの淵を七たらい淵というようになった。
 また、こうした恐ろしいことが二度とないようにと願う部落の人たちによって、大蛇が飛込んで姿を消したといういの淵の近くへ6つの地蔵様をたて、毎年3月に鎮めの祭を行うようになり現在に及んでいる。六地蔵の地名もこのことからつけられ、南無阿弥陀仏の6字の名号が1字ずつ刻まれた6つの地蔵様が部落の三叉路に立っている。

鳳来町誌民族資料編(南設楽郡鳳来町発行)より引用


七たらい淵

六地蔵

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