やすら姫の塚 前のページへ戻る   HOMEへ戻る

 長篠城趾の東北約1Kmの長篠前野部落のある農家へ、日暮れ方に、この辺では見かけたことのない大層美しい娘さんがやってきて、
「こんばんは、こんばんは」
とあいさつをして家の人を呼んだ。
「はーい、なんだのん」
と家の人が出てみると きれいな娘が立ってにこにこしていた。そして、
「すみませんが餅をつく杵を貸して下さい」
とやさしい声で言ったので、この農家のおかみさんは、心よく貸してやった。
 それからしばらくたつと、どこからか餅をつく音が聞えてきたが、まもなくその杵を返しにきた。
 しかし、おかしなことに、その次の晩も、またその次の晩も、同じようにそのきれいな娘が杵を借りにきた。
「ほい、あの娘は、また杵を借りにきたが、毎晩毎晩餅をつくなんて、どういうことずら」
「やい、あの娘はどこの娘だ」
などと、家の人達が不審に思い出した。
「こりゃあ、ちょっとおかしいぞ。あしたあ、後を付けて行ってみた方がええぞ」
と言って、あくる日の晩には、その農家の主人が、こっそりとついて行ってみた。
 するとその娘は、古くからある塚のそばまで行って、すうっと消えてしまった。
「おかしいな、家もないこんなところで」
と不審に思い、次の晩も同じように付いて行ってみたが、やっぱり古い塚のところで消えてしまった。
「こりゃあおかしい。どうも変だぞ」
と思い、このことを近所の人達に話してみた。近所の人達もこのことを聞いて、
「おんしゃあ狐に化されたんじゃあないか。」
「狐が娘に化けて、いたずらしとるんじゃあねえか」
「それにしても、あの塚が怪しいじゃないか。みんなで堀ってみるか」
と言いだした。
 いよいよみんなで、おそるおそる堀ってみた。すると土の中から赤いかめが出てきた。
「やい、こりゃあかめじゃあねえか。小判の入ったつぼだか、それともお化のつぼだか」
と、みんなが関心を集める中で、ふたを開けてみたところ、中には白い骨が入っていた。
「なんだ、こりゃあ骨じゃあないか」
と言っているうちに、不思議にもこの骨が、白い蝶になってひらひらと飛び去って行った。
 この様子を見た部落の人達は、気味が悪くなってきた。
「やい、こんな変なこたあない。法印様に見てもらわまいか」
と言い、近くの法印様に頼んで拝んでもらったところ、
「この塚の供養を怠ったためだ。これからは供養を忘れずにすれば、この前野の地に白水を流してくれるだろう」
と言った。
 白水とはよく肥えた水のことであったので、部落の人達は大変に喜び、早速お祭りをし、その後供養を続けたところ、この部落は作物がよくでき、平和で豊な村になった。

鳳来の伝説(鳳来町文化協会発行)り引用


やすら姫の塚

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