● 琵琶淵と大うなぎ 前のページへ戻る   HOMEへ戻る

 能登瀬のはずれから名越の部落に通ずる国道151号線が、川岸いっぱいにS字形に急カーブし、右側は切り取った岩山が迫っているところから、ここを険曲りと呼び難所となっている。
 この険曲りの左下に、青々とした水をたたえ、未知の川底をもった淵があるが、その形が楽器の琵琶に似ているところから、琵琶淵と呼ばれている。
 この淵には、昔から大うなぎの主がいるといわれ、近隣の人達から神秘な淵と思われていた。
 この琵琶淵の近くに、山仕事をする宗七という若者が住んでいた。宗七は魚釣りが大変好きで、ある嵐の吹き荒れた次の夜のこと、「嵐のあとは魚がよく釣れると昔から言うから、今夜はきっと釣れるぞ。ひとつ大物釣りに出かけるか」
と独り言をいいながら、琵琶淵へ出かけて行った。
 そして釣針を投げ込んで釣り始めた。
「今夜は、たしかに釣れそうだな」
と又独り言をいっていると、急に釣竿に強い手ごたえがあった。
 宗七は胸をはずませながら釣り上げたところ、釣り好きな宗七も見たことがないような、どぶとい大うなぎが上ってきた。
「こりゃあ大物だ」
と喜んだ宗七は、胸をわくわくさせながら大急ぎで家に持ち帰り、早速蒲焼に取りかかった。
 出来上った蒲焼を口にすると、大変にいい味だった。
「こりゃあすてきな味だぞ、日本一だぞ」
と言いながら腹いっぱい食べた。
 満腹した宗七は、大うなぎの頭や骨を、台所の隅に片付け、いい気分になって床についた。
 ところが真夜中になって、激しく家鳴りがし、家ががたがたとゆれだしたので、その物音に目を覚した宗七が、起き上ってみると、台所の隅に切捨ててあった大うなぎの頭が、むくむくと動きだし、気味の悪い光を放ちながら、琵琶淵の方へ転って行った。
 これを見た宗七は、誘い出されるようにふらふらとついて行った。すると大うなぎの頭は、琵琶淵のそばに立って、宗七を見てげらげらと大笑いし、淵の中へ沈んで行った。
 それ以来、宗七は高熱に苦しめられ、ついに土用の丑の日の丑の時刻に、誘い込まれるようにこの淵へ投身してしまった。その後、胴もしっぽも無い頭だけの大うなぎが、時々淵の岩の間から現われて人々をおぴやかすようになり、この奇怪な頭を見たものは、急に高熱に苦しめられ、近隣の人達から魔の淵と恐れられるようになった。

 鳳来の伝説(鳳来町文化協会発行)より引用 


琵琶淵

一つ前へ戻る        HOMEへ戻る