● ねぶき峠と石切地蔵 前のページへ戻る   HOMEへ戻る

 昔、能登瀬から名越へ行く道を、諸国修業中の1人の強そうな武士が、ねぶき峠へ向って歩いていた。やがて峠も間近くなった頃、急に強い雨が降り出したので、その武士は、峠のお堂の中にとび込んで雨宿りをしていた。
 しかし雨はなかなか止まず、とうとう日が暮れてしまった。この武士は仕方なくこのお堂へ泊ることにした。
 長い旅で疲れていた武士は、夜がふけるにつれて、深い眠りにおち入っていった。その真夜中のこと、どこからか怪物が武士の枕元に現われて、急に襲いかかろうとした。
 この時、武士はぐっすり眠り込んでいたが、さすがに修業中の武士らしく、怪物の迫ってきた気配に目を覚し、一瞬、枕元の刀をとって切りつけた。
 武士は確かな手ごたえを感じたので、その怪物らしきものを物色したが、何も倒れていなかった。
「おかしいな、確かに手ごたえがあったのだがなあ。」
と不審に思いながら、また横になって眠ることにした。
 やがて朝を迎えた武士は、夜中の一件を思いだしながら、お堂の中を見まわした。するとそこに、2つに切りさかれた石地蔵が転がっているのを見つけたが、その石地蔵には、刀きずと思われる跡が残っていた。
 武士は残念がりながら、お堂を後にして名越へ下りて行き、茶店に寄って休みながら、
「わしは只今、諸国を武者修業中の者だが、夕べこの上の峠で雨にあい、お堂の中で休んだが、怪物らしきものが現われたので切りつけてやった。確かに手ごたえがあったが、残っておったのは2つになった石地蔵だけで、つい怪物を取り逃してしまって残念だが、わしの腕にくるいはないはずだ。だから、あの峠の怪物は、2度と出ることはないだろう。」
と言って、また奥の方へと歩いて行った。
 茶店の主人は、この話を聞いてぴっくりし、おそがおそがねぶき峠のお堂へ行ってみた。お堂には、さっきの武士が語ったとおり、2つに切られた石地蔵が倒れていた。
 この茶店の主人は、店に帰ってこの様子を店の者に話し、
「みんながよくおどかされた怪物が、これで出にゃあいいがなあ」
と語ったが、それから以後は、つい怪物事件はおきなくなり、みんなを安心させることになった。

 鳳来の伝説(鳳来町文化協会発行) より引用 


ねぶき峠と石切地蔵
 
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