● しょうべん地蔵 前のページへ戻る   HOMEへ戻る

 三河国と遠江国の境に本坂峠がある。 その峠の手前に長楽という部落がある。 
 この部落から南へ入った所に大きな桧があり、その根元にお地蔵さまが祀られている。 村の人たちはしょうべん地蔵とよんでいる。 ここは、昔から子どもたちの遊び場であった。
 ある秋の夕ぐれ、数人の子どもたちが花をつんだり、草の実をとってお地蔵さまにお供えしていた。
「お地蔵さまにお団子を作ってあげよう」
「そうだ。そうだ。そうしよう」
 ところが、土が乾いていてお団子にならない。 すると、ひとりの子がピチャ、ピチャピチヤャ・・・としょうべんをかけだした。 ほかの子もキャーキャー言いながら小便をかけた。 そして、次々と泥のお団子を作り、お地蔵さまにお供えした。 そして、お地蔵さまのまわりで、楽しそうに遊び歌を歌い、遊び始めた。 その時、物陰から子どもたちの様子を見ていた庄屋さんが飛び出して来て、
「もったいないことをするものだ‥・。 お前たちは何をしているんじゃ。 お地蔵さまに小便団子をあげるとは、罰当たりなことを。 お地蔵さまにあやまりなさい」
 お地蔵さまのまわりで楽しく遊んでいた子どもたちは、突然、庄屋さんに怒鳴られ、しゅんとなってしまった。
 その夜、庄屋さんは、子どもに注意したので、あの子たちに罰が当たらずに済むだろうで良かったなあと気分よく床についた。
 ぐっすりと眠っている庄屋さんの夢の中にお地蔵さまが現われた。
「これ、これ庄屋、今日はとんでもないことをしてくれたな。 わしが子どもたちと楽しく遊んでいたのに・・・」
と言うと、すっと消えてしまった。
 庄屋さんは大変驚き、夜もろくろく眠れなかった。 朝が来るのを待って、早速子どもたちの家を訪ね、
「昨日は、わしが悪かった。 これからも、今まで通りお地蔵さまと仲良く遊んでおくれ」
と謝ってまわった。
このことがあってから、だれ言うともなく「しようべん地蔵」と呼ぶようになった。 そして、いまでも子どもたちの守り神として人々から厚く信仰されている。
 豊橋の民話「片身のスズキ」(豊橋市図書館発行) より引用 


長楽のヒノキ

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