● しあわせ地蔵 前のページへ戻る   HOMEへ戻る   東三河の伝説・昔話へ 

 ある日のこと、おばあさんが重い鍬で荒地を耕していた。
「ああー、こんきいなあ。 掘っても、掘っても石ころばっかだ。 開拓なんて、ちっともいいこたあない。 この松もしぶといなあ」
 おばあさんは、しっかり根を張った小松を憎らしそうに見ながら、痛む腰をさすった。 その時だった。 松と松の間に何か光るものが見えた。
「何だやあ? 石みたいだが、こりゃ、大きいぞ!」
 鍬をほっぽり出したおばあさんはびっくりした。
「これは、地蔵さまではないか!」
 頭のあたりは、傷だらけで、顔もちょっと欠けているようだが、石ころではない。 木の間からさしこんできた太陽の光を浴びて、ほんのりと温もっていた。
「おじいさん、地蔵さまだあ。 うちの畠に地蔵さまが‥・」
「おいおい、だめだぞ。 その地蔵にさわっちゃあいかん。 たたりがあるで・‥」
 おじいさんは、目の色を変えて言った。
「たたり? 何かあっただかん?」
「ここに開拓が始まったころだがな、苦労続きでたいへんだった。 その地蔵はどこから来たのか、大きな松の木の下にいたんだが、その枝を切っただけで、足が動かんくなったり、さわっただけで病気になったり、嫌われもんだっただ」
 おばあさんは、あちこち捨てられて来たと言うお地蔵さまをあわれに思った。
「おじいさん、みんなに相談しとくれん。 わしゃあ、きちんと祀ってあげたいやあ」
 おじいさんは、周りの人たちに呼びかけ、何度も寄り合いを重ねた。
「お地蔵さまを粗末にすると、不幸がくるかもしれん」
「250年も前のものだってよ。 わしらのこと、何でもご存知だに」
「長い間、苦労してきたで、きっと強いお地蔵さまに違いないだよ」
「どうだん、みんながよく見えるとこに移してお祀りせまいか」
 みんなの心が寄せ集まったお地蔵さまは、見晴らしのよい高台に置かれた。 赤い帽子と赤い前だれのお地蔵さまも、秋の日を浴びてうれしそうに見えた。
 今日は、お地蔵さまに新しい性を入れる日だ。
「夢にお地蔵さまが現れて『ありがとう』って言われたよ。 お地蔵さまは、生きておられると思ったよ」
「よかったのん。 これで、みんなに幸せがくるぞん。 これからは、しあわせ地蔵と呼ぶまいか」
 願いがかなったおばあさんも、腰をのばし、ニコニコ笑っていた。
 豊橋の民話「片身のスズキ」(豊橋市図書館発行) より 


しあわせ地蔵

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