●  光明寺の狸 前のページへ戻る   HOMEへ戻る   東三河の伝説・昔話へ 

 菟足神社の裏から光明寺や龍徳院にかけて、篠束へ通じる道の両側は、昼でも暗いうっそうとした森や竹薮が茂つていました。 またお墓もあり大変さびしいところでした。 このあたりには狐や狸の住んでいる穴があり、夜ここを通る人たちは、時々化かされました。
 ある夜、一人の男がお祭りのごちそうを親戚の家に届けるために、この道を通りかかりました。 その時、森の中から、
「ああ、雨が降ってきたわ。」
と若い女の声がしました。 男はおかしいなと思いながら手をかざしてみると、冷たいものが降るようでした。
「どうぞ、この傘をお持ちなさい。」
と言って、女は大きな傘を貸してくれました。
男が傘をさそうとしていると、
「この道は暗いし、雨も大降りになってなんぎそうだから、少しの間ここで雨やどりをしていきなさい。」
と言うので、男は女の言うように大きな木の下で傘をさしたまま雨やどりをしました。 そのうちに男は、お祭りの疲れのためうとうとし始め、いつの間にか眠ってしまいました。 しばらくして男は、風の音で目をさまし、
「もう雨がやんだかな。」
 あたりを見回しましたが、全く雨が降った気配もなく、木の間からは星空が見えていました。
「おかしいなあ。」
 男は自分の身の回りを見回すと、丸簀(まるず)を頭の上に乗せて、道のまん中にすわりこんでいました。 そして、持っていたごちそうはふろしきごとなくなっていました。 あたりを見回すと、狐や狸の目が光っているのが見え、風で木の葉のゆれる音だけが聞こえていました。
「小坂井のむかし話」(小坂井町教育委員会発行)より

 光明寺

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