おしゃもじ様 前のページへ戻る   表紙へ戻る

 井代の旧道の西の畑の中の、大きな榊の木の下に、たくさんのしゃもじの山に埋ったおしゃもじ様と呼ばれるお祠がある。
 昔は、この付近はこんもりした林になっていて、しゃもじの森と言われていたが、この村の人がだんだん増えてきたので、村の人達が相談をして、この森の木を切って開墾し、畑にしたらと言うことになった。
 しかし村人の中には
「あの森は、おしゃもじ様の祭ってある森だで、木を切って畑などにするとたたりがあるぞ」
と大層心配する人もいたが、多数の意向によって、いよいよ開墾の仕事を始めることになった。
 さて仕事を始めて数日たった日のことである。木を切っている人の前へ、赤い帽子をかぶった大蛇が突然現れ、いかにもうらめしそうに見つめていた。
 その人はひどくびっくりし、急に体がふるえだし、ぞくぞくしてすごく気分が悪くなってきたので、やっとの思いで家へとんで逃げ帰ったが、間も無く高熱が出て苦しみだした。
 家の人も心配して医者にみてもらい、薬も服用したが、熱はいっこうに下らず、何日も何日も苦しめられた。
 そのうちに、
「こりゃあただの熱じゃあないぞ。ひょっとするとおしゃもじ様のたたりじゃあないか」
と言い出す人があった。
「そうだ、おしゃもじ様の木を切るとたたるって、昔から言っとったでな」
と言う人もあった。
「それじゃあ、新しいおしゃもじを持って行って、おしゃもじ様にお詫びをしたらどうだ」
と、物知りの老人が教えてくれた。
 そこで家の人が、新しいしゃもじを持っておしゃもじ様へ詣り、木を切ったお詫びをして、高熱が下るようにとお願いをした。すると不思議なほど急に熱が下り、元気になることができた。
 また、ある年のことであった。
「おしゃもじ様は、こんな低いところよりも、高くて見晴しのいい山の上の方がいいじゃあないかな」
と言う村の人達の考えで、部落のあちらこちらにあった石仏と一緒に、愛宕山に背負上げて祭ることにし、それぞれみんなして運び上げた。
 ところが、どうしたことか、おしゃもじ様を運んだ人だけが、その晩から原因不明の高熱が出て大変苦しみだした。あまりにも不審な高熱であったので、家の人達も心配し、行者にみてもらった。
すると行者は、
「こりゃあおしゃもじ様のさわりだ。おしゃもじ様は高い山の上より、民家のある近くが好きなんだよ。元の場所へ帰りたがっておられるんだ。元へ移してあげりゃあ熟は下るよ。」
と言ったので、それではと、早速元へ移してあげたところ、その人の高熱は下ったといわれている。

鳳来の伝説(鳳来町文化協会発行)より引用


おしゃもじ様

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