光輪寺と大狸 前のページへ戻る   表紙へ戻る

 大輪部落の光輪寺は明治初年に廃寺になり、それ以後無住になっている。
 明治の中ごろのことである。愛郷の小学校を建築するとき、その建具を作るために隣りの田峯村からやって来た建具屋が2人、この無住の光輪寺に泊まっていた。
 ある夜中のことであった。寺の入口の方で激しく火花が散りがたがたと家が揺れだした。2人は不審に思いながら入口の方を見ていると、「ちょっとやっかいになりたいからお願いします。」といって、1メートル足らずの小僧が入ってきた。おかしな小僧だなと思っているうちに、その小僧は早くもごそごそとふとんの中へはいり込んできた。2人は、ますます妙な小僧だなと思いながら、外へ出て用足しをして帰ってきた。その小僧はもうふとんの中で眠っていたので、「おい小僧一度起きろ。」と大きな声で起こしたとたんに、急にいなくなってしまった。
 おかしな小僧だな、どうしたことかと思いながらその夜は寝てしまった。ところがその翌日の晩から、激しく鐘が鳴ったり、ある時は激しい風が吹いたりすると例の小僧がにこにこしながら入ってきては、ふとんの中へもぐって寝ていくのであった。こんなことが幾晩も幾晩も続くので、2人はついにたまりかねて部落の人たちにこの話をした。
 部落の中に猟師の名人がいて、それはおそらく光輪寺に住む大狸のしわざであろうといった。
 そこで2人は猟師の名人と一緒に、大狸を捕えようとして寺の近くにわなをかけた。間もなくとても大きな狸がわなにかかった。その猟師も見たこともない程の大狸で、部落中の大評判になったが、それ以来あの小僧は2度と出てこなかった。

鳳来町誌民族資料編 伝説と民話(南設楽郡鳳来町発行) より引用 


光輪寺跡

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